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Environment 環境

生物多様性の保全に向けた取り組み

基本的な考え方

 人類の活動による地球温暖化、環境汚染、乱開発、乱獲等により生物多様性が急速に失われつつあり、生態系の維持が危機的な状況にあります。今、対応を怠れば、将来、生態系サービスを享受できないことにより社会全体が大きなダメージを受け、「持続可能な社会」が実現できなくなります。三ツ星ベルトグループは、これまで地球温暖化の抑止に向けてCO2排出量削減活動に取り組んでまいりましたが、生物多様性の損失もまた、社会全体にとって地球温暖化と同じく重要性・緊急性の高いリスクであると認識しています。

 当社は、マテリアリティの一つに「生物多様性の保全」を掲げ、水資源をはじめとする各課題毎にKPIを設定し、種々の活動に取り組んでいます。

戦略

 サステナビリティ推進委員会において、TNFDが推奨する開示フレームワークに従って「生物多様性の保全」に関するリスクと機会の洗い出し、また、それらが三ツ星ベルトグループの事業活動に与えるインパクト評価を実施し、その結果を戦略と目標に展開いたしました。

事業活動地域と自然との関係

1) 自然への依存と影響

 当社グループの生産拠点では、ゴム製品の加工において、熱媒として蒸気を、冷媒として水を使用しています。自然から供給される良質で十分な量の淡水がなければ、たちまち操業を中断せざるを得ない状況に陥ります。また、天然ゴムや綿、パーム油を加工したオイル等は、ゴム製品の製造において、非石油由来の原材料として活用されていますが、これらの供給が途絶えた場合、石油由来の原材料に依存せざるを得なくなり、資源枯渇のリスクが増大します。さらには、当社グループの主力製品である伝動ベルトおよび関連製品は、農林水産業、鉱業、半導体、自動車、電機、機械、食品、物流業界など、様々な分野で広く活用されています。このことから、当社グループの事業活動は水や自然素材だけではなく、その他多くの生態系サービスにも依存していると認識しています。

 ENCORE※1 を使って、当社グループが属する業界(サブインダストリ:自動車部品、タイヤ・ゴム/生産プロセス:部品製造、タイヤ・ゴム)の生態系サービスへの依存を調査しました。調査の結果、“Very High”レベルで依存している生態系サービスは存在しませんでしたが、「地下水」と「地表水」については“High”レベルで依存しているとの調査結果となりました。

 当社グループの生産活動では、エネルギーを含む種々の資源(水や天然資源など)を消費し、廃棄物、排水、排気、排熱、騒音、臭気などを排出しており、自然環境に大きな影響を及ぼしています。ENCOREで特定した業界の生態系へのインパクトドライバー(影響因子)には、“Very High”レベルの影響因子は存在しませんでしたが、 “High”レベルの影響因子として「生活妨害」、「温暖化ガス排出」、「土壌汚染」、「廃棄物」、「水質汚染」、「水消費」の6つが確認されました。

 これらの結果を踏まえ、当社グループでは、自然資本の持続可能な利用と環境への影響低減に向け、引き続き、資源の効率的な利用や環境への影響緩和を考慮した製品設計などの具体的な取り組みを進めてまいります。

  • ENCORE(Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposure)は、金融機関のネットワークである「自然資本金融同盟」と国連環境計画世界自然保全モニタリングセンター(UNEP-WCMC)などが共同で開発したオンラインツールです。このツールは、組織が自然関連リスクへのエクスポージャーを調査し、自然への依存とその影響を把握・評価するために活用されます。
2) 事業活動地域と生物多様性にとって重要な地域との接点

 三ツ星ベルトグループの製品ライフサイクルを考慮した事業活動地域と、生物多様性の保全にとっての重要地域の接点を調査・特定しました。具体的には、事業活動地域として、①当社グループの16生産拠点の所在地域、②原材料である天然ゴム・綿花の生産地域、③原材料・エネルギー源である原油の生産地域を選択しました。生物多様性の保全にとって重要な地域には、生態系の完全性が失われつつある「ホットスポット」※1 と呼ばれる地域、絶滅危惧種の保護が必要とされる地域(AZE site※2)、水ストレスの高い地域※3 を選択しました。

 当社グループ各拠点の事業活動に伴う水消費および排水・排気、また廃棄物による環境汚染は生態系に強く影響するものと認識しています。具体的には、天然ゴムの生産において土地利用による森林破壊が、綿花の生産において栽培に要する水消費、農薬による環境汚染が生態系に強く影響すると考えています。天然ゴム、綿花については、既に国際的な環境課題として取り上げられ、その改善に向けていくつかのイニシアティブが立ち上げられており、当社グループの事業活動において最優先で取り組むべき課題であると考えています。また生産活動における水消費量の削減活動は、活動の主体となる日本国内の生産拠点が全て生物多様性のホットスポットに所在することから生物多様性の保全にとっても重要な施策となるため、その目標を確実に達成してまいります。

  • ホットスポットとは1,500種以上の固有維管束植物 (種子植物、シダ類) が生息しているが、原生の生態系の7割以上が改変された地域のことです。
  • AZE siteとは、生物多様性イニシアティブAlliance for Zero Extinctionにて開示されている、地球上で最も絶滅が危惧されている1,483種の個体群が最後に残っている地域のことです。
  • 水ストレスの高い地域は、World Resource InstituteがAqueductのWATER RISK ATLASにて開示されている“Water Stress”において、“Extremely High”に分類された地域としました。
シナリオ分析とリスクと機会、戦略

 三ツ星ベルトグループの事業活動地域と生物多様性の重要地域の関係、また下記表1に示したシナリオを考慮して、洗い出したリスクと機会およびその対応施策を表2にまとめました。シナリオの内容は、開示されている生物多様性に関するレポートやWorld Resource InstituteのAqueductから得られた情報を基に検討し、 2030年と2050年における自然環境と社会の状況に展開しました。

表1 生物多様性の保全状況から見た近未来のシナリオ
表2 生物多様性の保全におけるリスクと機会

 環境配慮型製品の開発に取り組まないことは、新規の事業機会 を失うだけでなく、既存の製品需要も減少させるという財務的影響を発生させます。気候変動対応においてカーボンフットプリントの大きな製品が市場から排除されるのと同様に、生物多様性の保全に悪影響を及ぼす製品は市場から排除されていきます。実際に、2023年6月にはEUDR(欧州森林破壊防止規則)※1 が発行され、欧州市場への輸出の際に当該製品が森林破壊に繋がるものではないことを保証することが求められることになっています。

 一方で、水ストレスの高い地域での水利事業は、今後ますます活発になっていくと予想されます。当社が提供する遮水シートとその施工サービスは、日本国内では水利事業において既に広くご採用いただいていますが、現状においては、海外の水ストレスの高い地域への展開はほとんどできておりません。主力製品である伝動ベルトの販売網を活用し、遮水シートおよび施工サービスの水ストレスの高い地域への事業展開を行ってまいります。

 水消費量の削減に取り組み、その状況を適切に開示していくことは、気候変動対応におけるCO2排出量の削減・算定・開示と同様に、事業活動にとって重要な施策であると考えています。当社におけるこれまでの取り組みから、水消費量削減の施策として冷却水循環システムを使ったリサイクル水の活用が有効であることが既に確認されており、このシステムを積極的に展開していくことで確実に水消費量を削減してまいります。

  • 世界の森林破壊・劣化に対するEUの加担を最小限に抑えることを目的として、事業者および貿易事業者がEU市場にて取引するコモディティ7品目(カカオ、コーヒー、パーム油、ゴム、大豆、牛、木材 およびその派生品)を対象に、森林破壊につながる製品の取引禁止やデューデリジェンス実施を求める規則。中小企業では2025年6月30日から、中小企業以外では2024年12月30日から EU域内においてEUDR 基準に満たしていない製品の販売が禁止される。

目標

 当社グループでは、綿や天然ゴムを使用しない製品仕様の開発は既に完了していますが、それらの製品では止むを得ず一部再生可 能ではない原材料を使用せねばならず、資源枯渇を考えた場合、綿や天然ゴムは引き続き重要な役割を果たす原材料であると考えて います。こうした背景から、今後、2023年度に策定しました調達ガイドラインに基づき、綿や天然ゴムのサプライヤーに対して生物多様性の保全に配慮した事業活動を行っていただくよう働きかけていく計画としています。水資源に関する目標については、 「水資源保全に関する取組み」の「指標と目標」 をご参照願います。