1. TOP
  2. サステナビリティ
  3. 水資源保全に関する取り組み

Sustainabilityサステナビリティ

水資源保全に関する取り組み

基本的な考え方

 三ツ星ベルトグループは、環境保全に取り組むことを重要な経営課題の一つと位置づけており、「水資源の保全」に注力しています。  当社が行っている水資源の保全に関する取り組みは、地球温暖化による気候変動に対応する取り組みと密接に関連しています。水は、私たちが生きるために欠かせない重要な資源でありながら、その重要性に反して水の枯渇や汚染が進んでおり、私たちの社会生活、経済活動、自然環境に深刻な影響を与えています。

 当社は、水の枯渇や汚染が社会に及ぼす影響を深く認識しており、事業活動における「取水量の削減」と「排水の水質管理(水質汚染の防止)」 に努めてまいります。また、生産拠点の所在地ごとに定められた水利用に関する法規制を支持し 確実に遵守し、WASH(Water, Sanitation, and Hygiene) に関する活動は、「SDGs目標6 安全な水とトイレを世界中に」を支持し 、労働安全衛生活動、および社会貢献活動として展開してまいります。

ガバナンスとリスク管理

 三ツ星ベルトグループの水資源保全活動に関するガバナンスとリスク管理プロセスは、「気候変動に関わる取り組み」と共通しております。

戦略

 水道水が飲料水として使用でき、かつ低コストで入手できる日本では、水資源の保全に対する意識が薄れがちです。実際に、当社グループの国内生産拠点は、主力製品である伝動ベルトの生産量が海外生産拠点の1/3に過ぎないにもかかわらず、海外生産拠点の約2.5倍の水を使用しています(2024年度時点、図1、図2参照)。

 しかし、日本全土が生物多様性のホットスポット※1に指定されており、取水による水ストレスの悪化、排水による環境汚染など事業活動による自然環境への影響は、生物多様性を棄損するリスクとなっています。
 
 海外生産拠点は日本に比べればはるかに高い水ストレス地域に所在しているため、良質な水は高コストとなることから、拠点設立時から取水量削減の施策が実行されてきました。しかし、近年、生産量の拡大に伴う取水量の増加、地球温暖化による所在地域の水ストレス上昇等が発生し、行政の取水制限、あるいは渇水等により水の供給不足が発生し生産活動が抑制されるリスクが高まる中、さらなる取水量削減活動が必要となってきています。また、当社グループが原材料として使用する綿は、栽培時における取水と農薬による環境汚染が栽培地域の水ストレス悪化の原因となるため、栽培におけるこのような環境課題への対応状況を検証した上で購入すべき材料となっています。
 
 こうした現状を踏まえ、「水資源の保全」に関するリスクと機会を洗い出し、それらが当社グループの事業活動に与えるインパクトを評価のうえ、その結果を戦略と目標に展開いたしました。  

 三ツ星ベルトグループの生産拠点ごとの「水供給不足」および「水ストレス」のリスクを分析、評価しました。「水供給不足」リスクおよび「水ストレス」リスクは、生産拠点の所在地により変化するため、World Resources InstituteのAqueductから、現在および将来のリスク情報を入手し、SSP1 RCP2.6、SSP5 RCP8.5シナリオに沿った2030年、2050年、2080年のリスクを5ランクで表示しました(リスクが高い:5⇔リスクが低い:1)。

※1 ホットスポットとは1,500種以上の固有維管束植物 (種子植物、シダ類) が生息しているが、原生の生態系の7割以上が改変された地域のことです。

a. ハザードスクリーニング


拠点略称
 MBL(USA) : MBL (USA) CORPORATION
 MOH : MITSUBOSHI OVERSEAS HEADQUARTERS PRIVATE LIMITED
 MBI : PT. MITSUBOSHI BELTING INDONESIA
 SEIWA : PT. SEIWA INDONESIA
 STI : STARS TECHNOLOGIES INDUSTRIAL LIMITED
 SMB : SUZHOU MITSUBOSHI BELTING CO., LTD.(蘇州三之星機帯科技有限公司)
 MB(POL): MITSUBOSHI POLAND Sp.z o.o.
 MB(IND)Rabale : MITSUBOSHI BELTING-INDIA PRIVATE LIMITED (Rabale Plant)
 MB(IND)Supa : MITSUBOSHI BELTING-INDIA PRIVATE LIMITED (Supa Plant)

国内7生産拠点において、水供給不足リスクは気候変動の影響をほとんど受けず、リスクの低い(レベル1~2)状況が世紀末まで継続すると判断しています。海外9生産拠点の水供給不足リスクは、日本と比べるとやや高いリスク(レベル1~4)を有していますが、既に、冷却水循環システムやミスト冷却システム等の対策を講じ安定した操業を継続できています。また、世紀末まで現在の水供給不足リスクから大きく変化することはないという分析結果より、冷却水循環システムやミスト冷却システム等の展開は進めるものの、差し迫った対応の必要はないと考えています。
 
 国内7生産拠点の、現在の水ストレスリスクは、水供給不足リスク同様、気候変動の影響をほとんど受けず、リスクの低い状況(レベル2~3)が世紀末まで継続します。海外9生産拠点においては、インドの1生産拠点、中国の生産拠点、米国の生産拠点が最高のリスクレベル5、インドネシアの2生産拠点、タイの生産拠点がリスクレベル4とかなり高いリスクレベルにあり、この状況が世紀末まで続くと思われます。水ストレスリスクを悪化させる主な原因は、"人口増加"、"気候変動"、"水紛争"等、地域の社会環境にあると言われているため、水ストレスに関する基本的な対応施策を「取水量の削減」とし、地域ごとの社会環境変化を確実に監視・評価し、適時適切な対応をとっていきたいと考えています。

 さらには、水ストレスリスクの調査範囲を、サプライチェーン全体へ広げた結果、当社が使用する原材料の一つである「綿」の生産地域と水ストレスの高い地域とが、インド北西部で重なっていることが確認できました。この地域の現在の水ストレスは最高ランク5にあり、将来も改善されません。2023年度に策定しました調達ガイドラインでは水資源の保全に関する活動の実施を明確に要請しており、サプライチェーン全体で「サステナブルコットン」等のサステナビリティ材料への切換等を進めていきたいと考えております。

 リスクと機会の洗い出しおよびインパクト評価の結果、気候変動による水供給不足および社会環境の変化に伴う水ストレスの上昇は、当社グループの生産活動における取水に影響し、対応を怠れば製品供給の遅れにつながります。他方、適切な対応を実施できれば製品の安定供給による顧客信頼性の獲得につながると判断しています。更に、水ストレスが高い地域で生産される綿を原材料として使用した場合、強制労働により生産された綿同様に、当社のレピュテーションに大きなマイナスの影響を及ぼし、不買運動等につながりかねないリスクを有しています。

 一方、水利事業として、効率的な水資源の活用を目的としたダム、ため池、用水路等の整備が進展すると予想され、これらに活用される当社の遮水シートおよびその施工サービスに対する需要の高まりが期待されます。

b. リスクと機会の洗い出しおよびインパクト評価結果



 生産活動の停止による財務インパクトは、グローバルな生産補完システムが機能することによって、連結ベースでの影響は非常に軽微なものとなりますが、生産拠点単独ベースでは、停止期間に応じた売上高の減少が見込まれます。  また、水利事業活性化による遮水シートの売上高は、これだけを分離して見積もることは難しいですが、2024年度のこれを含んだ建材資材分野の売上高は、2020年度比42%増の8,102百万円/年となりました。

目標

 これまで当社では、水の消費量を減らすために、日本に比べ取水環境の厳しい海外生産拠点を中心に「冷却水 循環システム」、「ミスト冷却システム」等を導入してまいりました。ゴム製品の生産においては、化学反応によりゴム弾性を発現させる"加硫"工程が不可欠ですが、この工程では、ゴムに硫黄等を加え、 高温(100℃以上)で反応させるため、加硫後には冷却が必要であり、この冷却に水を使用しています。

 2019年度、当社・北米の生産拠点MBL (USA) CORPORATIONにおいて、「冷却水循環システム」を導入いたしました。同システム導入前後の水使用量の推移は図の通りです。 導入前では、年間約7万㎥の水を使用していましたが、同システムの導入により、年間水使用量を3万㎥弱まで減少させることができました。

参考:MBL (USA) CORPORATIONにおける水使用量の推移
 


  前述の通り、当社グループ・国内生産拠点の取水量は、海外生産拠点の約2.5倍であり、特に国内生産拠点における取水量の削減が急務となっております。以下の目標を設定し、取水量の削減に取り組んでまいります。既に「冷却水循環システム」が導入されている海外生産拠点では生産量の増加に伴う取水量の増加が見込まれますが、水消費効率の維持・改善を展開し、2021年度の取水量原単位維持を目指します。これら施策の展開により、当社グループの2030年における水使用量は約900千㎥(2021年度比26%削減)を見込んでいます。

サブマテリアリティ 施策・内容 KPI
水資源保全の取り組み 冷却水循環システムの導入 国内拠点の取水量目標:
2030年度までに50%削減(基準年度:2021年度)
水消費に係る効率の改善 海外拠点の取水量目標:
取水量原単位を維持する(基準年度:2021年度)


実施状況

取水量削減活動

 2024年度の国内拠点の取水量は、名古屋工場において「冷却水循環システム」の導入、全拠点で水消費効率の改善を進めた結果、744,795㎥(2021年度比 ▲15.1%)となりました。海外拠点の取水量原単位は、全拠点で水消費効率の改善を進めた結果、15.18㎥/t(2021年度取水量原単位:16.77㎥/t)となりました。

図1 国内拠点の取水量の推移

図2 海外拠点の取水量原単位の推移