Sustainabilityサステナビリティ
「人財戦略の強化」人的資本経営の推進
基本的な考え方
三ツ星ベルトグループは、当社が今後も社会価値の向上とともに持続可能な成長を実現するためには「人財」が最も重要な成長の源泉であると認識し、2030年度の「ありたい姿」において、下記の「人財戦略」を掲げています。また、2024年5月に開示しました'24中期経営計画では、「企業価値向上への取り組み」の筆頭に「人財戦略強化」を掲げ、その取り組みをさらに加速させていきたいと考えています。
グループ従業員だけでなく、外部人材も含めた多様な方々の能力を掛け合わせることで収益性向上への大きな推進力を生み出してまいります。
変革を推進する人材の育成
- 「人」の力を最大限に発揮できる人事制度(教育を含む)、職場環境の充実
- 多様性を尊重した新しい発想、変革を恐れないチャレンジ精神を大切にする「企業風土」の醸成管理体制
人的資本経営の推進体制
当社グループにおける人材育成と職場環境整備に関する戦略と方針は、人事総務本部(部門長:取締役常務執行役員)において立案され、サステナビリティ会議で審議、決定のうえ、取締役会に報告されます。
人的資本経営の推進体制と役割

役割 | 推進組織 |
---|---|
異動、報酬、評価などの人事制度 ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン | 人事部 |
教育制度の企画・実行 | 人材開発室、DX推進室 |
安全衛生、健康管理などの 職場環境管理 | 総務部 |
職場環境管理に係る制度管理 | 安全環境管理部 |
従業員エンゲージメント、職場環境の整備、など | 働き方改革推進委員会 |
また、職場環境の整備、生産性改善に関する施策を組織横断的に実施し迅速に普及させることを目的として、取締役が委員長を務め、ダイバーシティ(性別、年齢、職種、職制)を意識した委員で構成する働き方改革推進委員会が設けられています。本委員会では、実行課題、対象部門、対応施策、目標を設定し、対応施策の実施状況を監視・評価し、必要に応じて施策内容の変更を指示します。これら活動内容は、対応施策の進捗状況に応じて、社長及びサステナビリティ会議に報告、審議され、この報告・審議内容は取締役会の報告事項となっています。
さらに、サステナビリティ会議においては、人的資本経営推進の観点から、マテリアリティの1つに「人財戦略の強化」が取り上げられ、施策ごとに推進組織(下記表参照)が指名されています。施策推進組織からサステナビリティ会議へは実施状況報告がなされ、施策実施内容の監視・評価が行われています。 「人財戦略の強化」に関するリスク管理のプロセスは「気候変動に係る取組」(リンク貼付け)と共通しております。2024年度、リスク管理委員会において、人的資本経営に関する重大リスクは特定されませんでしたが、サステナビリティ会議では、前述の通り「人財戦略の強化」がESG経営におけるマテリアリティとして特定されています。
マテリアリティ:「人財戦略の強化」 課題ごとの推進組織
取り組む課題 | 課題の施策 | 推進組織 |
---|---|---|
DE&Iの推進 | 女性管理職者割合の向上 | 人事部 |
人的資本経営の推進 | 従業員エンゲージメントの向上 | 働き方改革推進委員会 |
「人財戦略の強化」に関するリスク管理のプロセスは「気候変動に係る取組」と共通しております。2024年度、リスク管理委員会において、人的資本経営に関する重大リスクは特定されませんでしたが、サステナビリティ会議では、前述の通り「人財戦略の強化」がESG経営におけるマテリアリティとして特定されています。
人的資本に係る戦略と施策実施状況
日本の三ツ星ベルトグループを対象として、今後発生することが想定されている労働人口の減少と高齢化、人的資本経営の普及等を外部環境の変化と想定した場合に、事業活動へのインパクトを「リスクと機会」としてまとめました(下図参照)。
日本企業の経営において、労働人口の減少、従業員の高齢化は、各社共通した課題ですが、日本の三ツ星ベルトグループでは、これら以外に、女性従業員比率・女性管理職比率の低さが課題であると認識しています。また、2023年度からサーベイを開始しました従業員エンゲージメントの向上は事業活動の活性化に直結するものであり、その測定・監視・評価・改善は事業活動の中で重要な要素となります。また、これまで難しかった人事・総務施策の目標設定に活用することで、施策の有効性が明確になり、効率的な人事・総務活動につながると考えています。
図 日本の三ツ星ベルトグループにおける人的資本に係るリスクと機会
チャレンジを是とする企業風土改革
人事制度の再構築
当社では、『多様性を尊重した新しい発想、変革を恐れないチャレンジ精神を大切にする「企業風土」の醸成』を経営の最重点課題として捉え、「ありたい姿」実現に向けた種々の施策に取り組んでいます。
上述しました「チャレンジ精神を大切にする企業風土」を醸成するための施策として、2022年度より人事制度の改訂に取り組んでいます。新たな人事制度では、従業員のより主体的な"チャレンジ"を促し、結果だけではなく、その取り組む姿勢やプロセスを適切に評価することを目的に、コンピテンシー評価を取り入れ、また、若手社員が多様なキャリアパスを通じて早期に成長できるよう、監督・管理職への任用基準を含めた人材育成の枠組みを改定しました。引き続き、個の力を最大限に発揮できる人事制度を目指し取り組みを進めてまいります。
ジョブマッチング(社内公募制)
多様な個性が最大限に発揮され、そしてそれら個性が組織として活かされるためには、従業員の主体的な"チャレンジ"を支援する制度が必要だと考えています。この考えのもと、当社では、従業員自らが志向する業務へ挑戦できる機会を提供するため、従業員の手挙げによるジョブマッチング制度の導入を進めています。この制度により、従業員のキャリアプラン実現によるエンゲージメント向上にも期待しています。
人材マネジメント、育成・リスキリング
能力開発プログラム
当社では、新入社員教育、初期作業者教育をはじめとして、役割の変化に伴う階層教育、職務内容に応じた専門教育等、様々な能力開発プログラムを運用しています(下表参照)。
社員教育は、OJT(職場内教育)を基本として、スキルマトリックスをベースに部門あるいは定められた組織で年度ごとに計画・実行され、有効性を評価したのち、次年度の事業活動に展開されています。
また、自ら学び、自ら取り組み、問題解決に向けて努力する人材育成のため、充実した自己啓発プログラムを設けることで従業員各自の向上意欲を開発、助成する必要な施策を行っています。

次世代リーダーの育成
変革を成功に導く次世代リーダー育成のため幹部候補社員を社外の経営幹部養成プログラムへ派遣しています。論理思考力や「ヒト」「モノ」「カネ」の経営全領域を学ぶことで、ゼネラルマネジメントの視点を養うと共に異業種参加者との他流試合を行い、刺激を受けることで自らを高める事にも寄与しています。業界を超えた参加者とのネットワークは貴重な財産になっています。
海外派遣研修制度
グローバルで活躍できる人材育成のため、当社では、アメリカ、中国の2か国の大学に研修生を派遣しています。研修先の国では、語学の習得に専念できる環境が整えられているだけでなく、日本では体験する機会の少ない異文化交流を通じた多様な視点を養うまたとない機会であり、研修終了後は、グローバルな視野を持つ人材として所属部署での活躍が期待されるとともに、対象者のキャリアプランに応じて、その後の海外拠点での勤務にも挑戦することができます。
DX研修
日本においては、労働人口減少への対応を進めることが今後の事業を継続していくための重要な課題であると認識しています。労働人口が減少する中、DXを推進して生産性改善と自動化を進め、事業拡大に伴う要員の増加を抑制または削減するための施策推進に取り組んでいます。
DX研修プログラム受講者数(単位:名)
プログラム | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 |
---|---|---|---|
DX研修 | 33 | 730 | 558 |
自己啓発
自律的な学び直しを支援するため、2カ月ごとに従業員の手挙げにより受講者を決定し、費用を全額会社が負担する研修プログラムを設けています。当プログラムは eラーニング形式で提供されており、また、所属長の了解のもと就業時間内での受講も認められていることから、受講者はそれぞれのライフスタイルに合わせて学びを進めることができます。2024年度の受講者数74名・研修時間(1人あたり8.4時間)の学びの場が提供され、従業員のスキル向上に役立てられています。
eラーニング研修プログラム受講者数(単位:名)
プログラム | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 |
---|---|---|---|
DX研修 | 140 | 81 | 74 |
DE&Iの推進
女性活躍推進
当社は、年齢、国籍、性別などそれぞれ異なるルーツ・バックグラウンドを持つ従業員一人ひとりの能力と多様な個性が十分に発揮される企業を目指しています。ジェンダーの多様性の観点からは、当社においては、女性従業員および女性管理職の割合が少なく※、当社の多様性における課題の一つであると認識しています。こうした状況の改善を目指し、積極的な女性の採用を行うと共に、ジェンダーに関わらず全ての従業員の活躍を推進するため、従業員それぞれのワークライフバランスを実現する諸制度の拡充に取り組んでいます。
※ 2024年度実績 : 女性管理職比率:3.4%(三ツ星ベルト単体)
マテリアリティのKPI :2026年度:5%以上、2030年度:10%以上(三ツ星ベルト単体)
多国籍人材の活躍
当社グループは、11カ国15拠点で生産と販売を展開し、売上高および生産量の50%以上を外国拠点で占めるグローバル企業です。世界中で活躍する約4,500人の従業員のうち約60%が外国籍従業員です。
これら多様な人材が最大限に力を発揮できるよう、現地の文化や価値観に合った人材の確保および育成に取り組み、グローバルベースでの競争力強化を目指してまいります。
シニア人材の活躍
日本企業の経営において、従業員の高齢化は大きな課題の一つです。また、少子化問題の対策に進展が見られない現状においては、シニア人材の活躍は企業の競争優位の源泉確保に欠かせない課題となっております。現状では70歳までの雇用が当たり前になりつつあり、シニア人材の"経験"というメリットを活かしながら、"身体的な衰え"や"技術の陳腐化"というデメリットを打ち消す施策の導入が必要です。
当社では、①健康の維持、②リスキリング の2つの観点からシニア人材の活躍支援に取り組んでいます。
ウェルカムバック制度(アルムナイ採用制度)
当社では、ライフイベントや自身のキャリアプランの追求のために一度当社を離れた退職者を再雇用する制度の導入を進めています。 当社の企業文化や業務内容を深く理解している元従業員が一度当社を離れ経験を積み、異なる視点を持って戻ってくることにより、彼らの経験や知見を活用する機会を創出し、また、会社としては、当社の長所や課題に対する新たな気付きを得られることを期待しています。
障がい者雇用
当社では、障害を持つ方が安心して働ける環境を整えるため、車いす用のスロープや障害者用トイレなどを設置しています。 また、障がいを持つ方の雇用増加に努めており、2024年度の障害者雇用率は2.1%となりました。今後も法定雇用率の遵守を目指し、障がいを持つ方の雇用増加に努めてまいります。引き続き、誰もが働きやすい、多様な人材が活躍できる企業を目指してまいります。
障がい者雇用率
2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 |
---|---|---|---|---|---|
1.7% | 1.5% | 2.4% | 2.2% | 1.9% | 2.1% |
※法定雇用率は、2018年4月以降2.2%、2021年3月以降2.3%、2024年4月以降2.5%、2026年7月以降2.7%です。
働きがいのある職場づくり
働き方改革推進委員会
ワークライフバランスの取れた多様で柔軟な働き方を実現するために、職場環境の整備、生産性改善に関する施策を組織横断的に実施し、迅速に普及させることを目的として、当社では、取締役が委員長を務め、ダイバーシティ(性別、年齢、職種、職制)を意識した委員で構成する働き方改革推進委員会が設けられています。本委員会では、実行課題、対象部門、対応施策、目標を設定し、対応施策の実施状況を監視・評価し、必要に応じて施策内容の変更を指示します。これらの活動内容は、施策の進捗状況に応じて社長および取締役会に報告され、審議が行われています。
従業員エンゲージメント向上のための環境整備
従業員一人ひとりが 『心がはずみ、明日が華やぐ』 状態であることを目指し、2023年度より従業員エンゲージメントの測定を開始しました。 相対的にエンゲージメントスコアが低い30歳代および生産部門の従業員を中心に、1on1ミーティングの実施や、一般社員と経営層とのタウンミーティングの開催などにより当社理念および経営戦略等のさらなる浸透を図り、これら施策によりエンゲージメントの改善に努めてまいります。
従業員向け株式交付制度の導入 (MISA(ミーサ)※)
当制度は、対象従業員に株式を交付することで経営参画意識を醸成し、業績向上への貢献意欲や士気を一層高めることを目的としています。これにより、従業員エンゲージメントの向上を図り、当社の持続可能な企業価値の向上に繋げることを目指します。
※ MISA(ミーサ) : Mitsuboshi Individual Shares Award
ワークライフバランス(子育てや介護と仕事の両立)
前述の通り、当社は、年齢、国籍、性別などそれぞれ異なるルーツ・バックグラウンドを持つ従業員一人ひとりの能力と多様な個性が十分に発揮される企業を目指しています。ジェンダーに関わらず、子育てや介護などのライフイベントと並行して仕事とプライベートを両立しやすい職場環境づくりを進めています。主な取り組みは以下の通りです。
育児休業制度
育児休業は法律に則り、最長で子供が2歳になるまで取得ができます。育児休業からの職場復帰後は、労働時間を最大で2時間短縮できる短時間勤務の選択が可能です。短時間勤務は子供が小学校の始期に達するまで選択可能で、子供が3歳になるまでは賃金の減額もありません。また、所定外労働・深夜業務等に制限を設け、子育てを行う従業員を支援しています。
育児休業取得率
2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
---|---|---|---|---|
男性 | 10.0% | 26.5% | 59.3% | 50.0% |
女性 | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 100.0% |
当年度権利取得者の取得率(継続者は含まない)
子育てサポート
次世代の育成支援に積極的に取り組む企業を認定する「くるみん」を2008年に取得しています。従業員から"選ばれる"会社であることを目指し、今後はプラチナくるみんの取得を計画しています。
年次有給休暇制度
生活における様々な状況に対応して働き続けられるように、繰り越し日数も含め、最大で40日の年次有給休暇を取得することができ、また、休暇を取得しやすいように半日単位、時間単位の取得も出来る制度としています。
年次有給休暇取得率
2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 |
---|---|---|---|
48.6% | 53.1% | 68.3% | 67.1% |
特別休暇制度
年次有給休暇以外にも、結婚、出産、忌引、法要、転勤など、一人ひとりのライフイベントに対応した有給休暇を取ることができる制度を設けています。メモリアル休暇は誕生日の前後1週間に取得することができ、また、勤続15年 / 25年を迎えた従業員にリフレッシュ休暇を付与するとともに、旅行券の支給も行っています。
お星さま制度 / お星さま休暇 / お星さま研修
母子・父子家庭の従業員ならびに障害のある子ども、また要介護者のご家族を持つ従業員を対象とした制度で、支援金と特別休暇の両側面から支援を行っています。さらに、長期の育児休暇後の従業員には、スムーズな職場復帰をしてもらうためのメンタルサポート研修も実施しています。
介護休業
介護休業は法律に則り最大93日まで取得することができます。また、所定外労働・深夜業務等に制限を設け、介護を行う従業員の生活に配慮しています。
ドレスコードの自由化
DE&I促進の一環として、当社ではオフィスでのドレスコードを変更し、スーツや制服以外の服装を選択できるようにしています。従業員一人ひとりの個性を活かし、新しく自由な発想や自律的な思考が生まれやすい職場環境を目指しています。
新卒入社後3年以内の離職率
2018年から5年間の新卒入社3年以内離職率は平均6%程度であり、全国平均※の約30%を大きく下回っています。「人を想い、地球を想う」の基本理念のもと、人に優しい、温かい人間味あふれる社風に共感して入社してきた従業員が、物事に前向きに取り組み、活躍しています。
入社年度 | 入社人数 | 入社3年以内 | |
---|---|---|---|
離職者数 | 離職率 | ||
2018年度 | 33人 | 2人 | 6% |
2019年度 | 36人 | 2人 | 5% |
2020年度 | 23人 | 1人 | 4% |
2021年度 | 22人 | 3人 | 13% |
2022年度 | 19人 | 0人 | 0% |
※厚生労働省「新規学校卒業就業者の在職期間別離職状況」より
目標と実施状況
2024年、サステナビリティ会議では「人財戦略」における課題の施策「女性管理職割合の向上」と「従業員エンゲージメントの向上」を迅速、確実に改善することを目的としてそれぞれにKPIを設定いたしました。
課題の施策 | KPI |
---|---|
女性管理職割合の向上 | 女性管理職比率(課長) 2026年度 : 5%以上 2030年度 : 10%以上 (三ツ星ベルト単体) |
従業員エンゲージメントの向上 | スコア改善目標 2026年度 : 10%改善 2030年度 : 13%改善 |